2020年8月25日火曜日

■0.マーケティング・リサーチの品質について学ぶ意義

消費の多面化、商品・サービスの多様化に伴って、マーケティング・リサーチによる消費者や市場の把握が、ますます重要となってきました。

そのため、効果的なマーケティング・リサーチを実施し、その結果に基づく洞察がビジネスの成否を分けると言っても過言ではありません。

しかし、多くの労力と費用をかけても、決断の場面で、下記のような心無い誹謗・中傷が出てきて、マーケティング担当者を困らせます。

「この調査には、不備があるのではないか?」
「当社のビジネスには当てはまらないのではないか?」
「リサーチは、あくまで一部の意見。市場全体を把握することはできていないのではないか?」
「そもそも、マーケティング・リサーチは誘導的で、結論が先にありきのものではないか?」

こういった批判に反論し、マーケティング・リサーチの意義を説明するには、「マーケティング・リサーチの品質」について知らなくてはなりません。

2020年8月24日月曜日

このブログの目次

このブログの「マーケティング・リサーチの品質」基本編では、下記の目次に従って解説をしていきます。

この解説の部分は、投稿日時とは関係なく、目次に従った解説の順番で見てください。次のページの解説はページ最後の投稿の下部の「前の投稿」をクリックすると続けてみることができます。


1.構成概念と操作的定義

(1)構成概念
(2)操作的定義

2.3つの検証観点

3.測定の妥当性と信頼性

(1)測定の妥当性
    ⅰ.内容的妥当性
    ⅱ.規準関連妥当性
    ⅲ.構成概念妥当性
(2)測定の信頼性
    ⅰ.信頼性係数
    ⅱ.信頼性係数の推定方法 

4.リサーチ・デザインの妥当性

(1)外的妥当性
    ⅰ.選択バイアス
    ⅱ.標本抽出
(2)内的妥当性

5.データ取得時の妥当性

(1)生態学的妥当性

■1-1. 構成概念

 

マーケティングでは、人の行動のメカニズムを説明するために、研究者によって人為的に作った概念を使うことにします。これを「構成概念」といい、具体的には経験価値、ブランド・ロイヤルティ、ブランドパーソナリティ、ライフスタイル、製品関与、・・・等が挙げられます。

 【例】経験価値,ブランド・ロイヤルティ,ブランドパーソナリティ,ライフスタイル
    製品関与

特に覚える必要がないのですが、次の「操作的定義」の説明や、なぜ品質を高める必要があるのかを考えるうえで、この概念は必要になってきます。


2020年8月23日日曜日

■1-2. 操作的定義


構成概念は、そのままでは測定できませんので、議論を進めるうえでは測定できるように置き換える必要があります。

この構成概念を測定できるものに置き換えたものが「操作的定義」になります。

そのため、「操作的定義」が本当に当初考えていた「構成概念」と同等なものか確認する必要が出てきます。

それには、次の3点の確認が必要となってきます。

1.測定が正しいかどうか? →測定の妥当性と信頼性
2.測定方法が正しいかどうか? →リサーチ・デザインの妥当性
3.測定する場合、何か影響はないかどうか? →データ取得時の妥当性 

マーケティング・リサーチでは、意図せずこのようなことをやらかしてしまいがちです。これが、品質を低下させる原因となっていますので、以下順次、解説していきます。

・体温計で、体重は測れません

 測定の妥当性と信頼性

・メジャー(巻尺)で身長を測る時に、踵を浮かせると正確には測れません

 測定の妥当性と信頼性

・メジャーをピンと伸ばさないで緩めては正確には測れません

 →リサーチ・デザインの妥当性

・看護婦さんに血圧を測ってもらうと、血圧が高めになります

 →データ取得時の妥当性

2020年8月21日金曜日

■2.3つの検証観点

構成概念を測定可能な操作的定義に置き換える場合、その品質は、主に次の3つの点を検証し、総合的に判断していきます。

なぜなら、操作的定義は、あくまでも「直接測定できないものを測定可能なもので置き換えて測定する」というものであるからで、本当に測定可能なもので置き換えられているかどうか確認しなくてはならないからです。

 ●測定(尺度):測定する尺度に関する妥当性と信頼性

 ●リサーチ・デザイン尺度の用い方

 ●生態学的な観点測定時の人的の影響力

マーケティング・リサーチの品質を評価する場合、3つを総合的に判断する必要があり、どれか一つのみの検証では不十分です。

2020年8月20日木曜日

■3-1. 測定の妥当性と信頼性

 

「測定(尺度)」に関しては、さらに下記の2つの観点からの検証が必要になります。

 ●妥当性:その尺度が測定すべきものを測定しているか?
 ●信頼性:測定が安定していて正確であるか?

星野崇宏(2018)による分類


そして「妥当性」と「信頼性」の2つの関係を表したものが、「ダーツのアナロジー」と呼ばれるもので、下記のように図示されます。




2020年8月19日水曜日

■3-2. 測定の妥当性

 

測定の妥当性は、古典的には、さらに「内容的妥当性」、「基準関連妥当性」、「構成概念妥当性」に分類できます。